基礎って大事だなと定期的に思わされた話

ありがたい事に定期的に自分より遥か上のレベルのミュージシャンと演奏して出来ていたと思っていたことが全く出来ていなかったと言う経験をしました。その度に思ったのは基礎力ってのは大事だなと言うことです。

 

 

一番最初は20歳位の時に浅草のコンペで演奏したトミーキャンベルさん(ジョンスコとかとやってたドラマー)。初めて一緒に演奏したジャズの超一流クラスの人でした。とにかく何から何まであまりにも違いすぎて、もう何も出来なかったのです。

これは当時はビックリして・・・だって手は動くはずなのに何故何もできなかったのか。今思うに彼と音楽を共有できるレベルに何も無かったからでしょうね。ダイナミクスや音価のコントロールやタイム感やら全て。当時の自分が理解しているジャズ、と言うものとは全く違うと思いました。当時の私は元メタラーでテクニックには自信があったので、技術的には出来てたはずなのに、なんだこれはと言う感じで結構ショックを受けました。

その後も俺ってなんて適当にギター弾いてんだろうかと思う事は定期的に訪れました。

こっからサッカーに例えさせてください。

サッカーで全ての基本になるトラップと言う技術があります。来たボールを止める事をトラップと言います。シュートするんでもパスをするんでもまずはトラップから始まります。

高校サッカーで活躍した選手がいたとします。彼は抜群のパスセンスと創造性で評価されたがプロに入って試合に出てみたら何にも出来ない。これはカテゴリーを上げた選手に良く見る光景ですが何が違うのかというとプロの試合では必要とされる基礎の精度とスピードが違うのです。

普通のパススピードでパスが来て今までは足元1メートル以内に止めて、そっからパスをしていれば十分だったのが、プロの試合だと強いパスが来てトラップし1メートル足元からボールが離れただけで、ディフェンスに寄せられて何も出来なくなる。

試合のレベルが上がればパススピード、判断のスピード、全てが上がります。相手はより強いフィジカルであなたを激しくマークします。ちょっとでもトラップ仕損なったら相手にボール取られてしまう。ちょっとでも判断に迷ったら、パスコースが減ってバックパスしか出来なくなる。今までより厳しい条件でより正確に素早くトラップ出来ないとサッカーセンスなんて発揮する間もないんです。

 

 

ジャズの演奏も似ている所があります。正確なリズムとピッチで演奏するという大前提のレベルが違っていると、自分の音楽とか以前に何も出来なくなります。自分が得意な事なんか出す余裕が全く無いのです。自分が出来ていると思っている事のレベルが違うと全く勝負になりません。バンドのメンバーとその実力が大きく違うと基本的に音楽は成立しませんし、1人でもそのレベルが大きく劣る人がいると、音楽はその人のレベルに合ったものになってしまいます。

例えばバルサのパス回しがそうですが、ワンタッチで凄いパススピードでボールを回しています、あそこでトラップの精度が甘い人、パススピードが遅い人、次にパスする場所が分からない人が1人混ざっているとあのパス回しは成立しません。

まず自分がイメージした強さで、イメージした長さの音を出す。たったこれだけの事ですが、シンプルだけにこれが出来てない時の何も出来なさと言うのは凄いです。言って見たら何にも出来なくなる位。

何事も体験して痛い目に合わないと重要性は認識しづらいものですが。私の場合はこの様な機会が定期的に訪れました。私はその度に「俺はなんて適当にギターを弾いていたんだ、全然出来てなかったのか」と思いました。今も現在進行形で思っている事でもありますが、より自分のイメージに忠実に音を出す、人の音を聞く事が出来る様にしたいと思っています。